さくり、と砂を噛む革靴の音。月光落ちる渓谷に白銀の剣が冷たく光る。高台に腰掛けて来訪者に微笑みかけたバッツは、彼の眉間に刻まれた皺に目を細めた。
「悩むなって」
「…………どうして」
 その先を飲み込んだ彼がこちらを睨みつける。とろりとした夏の空の色だ。その青を傷付けたのはバッツであり、その色に硬さを加えたのもまたバッツだ。そんな色をさせたいわけではないと思うが、それはエゴである。
 いまだにこれでよかったのか悩んでしまう。だが、告げることはまだ出来ないし、彼が自分により痛んでいる姿を見て僅かながら満足してしまうのも事実だ。
「バッツ」
 後ろからかけられた声に振り向けば、漆黒の鎧を纏った魔道士が立っていた。
「ゴルベーザ」
「……本当に、良いのか?」
 鋭い殺気が自分達の背に注がれている。秩序を裏切って混沌に向かった、何も告げずただ闇の傍へと向かった男を蔑んでいるのだろうか。それとも、何も告げなかったことを恨んでいるのだろうか。
 息を吸ってゴルベーザを見上げた。青い瞳の彼の耳に入らないようにトーンを下げる。
「ひっでえなあ。おれを選んだのあんただろ」
「…………このような思いをさせるつもりはなかった」
「気にすんな」
 きっと、解ってくれる。感情の振れ幅が大きい恋人は今は何も見えなくなっているけど、きっと解ってくれる。全てを綺麗に、優しく終わらせるための策をその聡く強い心で解ってくれるとバッツは信じている。
 たとえ仲間から疎まれようとも、為せるのなら構わない。秩序の神とこの黒い魔道士の前で宣言した言葉は忘れていないし変わることはないだろう。
「あんな話聞かされちゃ協力するしかないしな」
「強いな」
「あんたもな」
 そして、彼も。
 ゴルベーザに連れられて闇に抱かれる寸前、振り向いて笑う。目を見開いた彼が愛しくて、涙が一粒零れ落ちた。

「好きだよ、スコール」

 心の奥だけの呟きが彼に届いたかは、知らない。


ディシディアのバッツはマジで埋伏出来んじゃね!?という謎の妄想。関係ないけどディシディア効果で歴代FFがどこにも売ってません……あああやりたい。タイトルは素敵な映画からお借りしました。
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2009/03/07 : アップ